経済教室NO.8好調「大企業」、「家計」は苦戦

◆4期連続増益
 日本経済は現在、調整局面にありますが、大手企業を中心とした企業収益は、今後も好調を維持しそうです。
 企業収益はITバブルが崩壊した2001年度には大きく落ち込みますが、翌年度には一転してV字回復を果たし、これまで2期連続で増収増益を続けてきました。
 大和総研によれば、金融を除く大手300社(全産業ベース)の04年度の業績予想は、5.5%増収。22.4%の経常増益で、経常利益は過去最高を更新する見通しです。さらに、05年度には伸び幅は縮小するものの、2.3%増収、4.6%経常増益、過去最高の経常利益更新を予測しています。
 好調さの背景には、人員削減や事業再編など厳しいリストラによるコスト削減の努力が実り、収益力が向上したことがあります。過剰な設備や債務を解消し、積極的な投資を行う企業が増えています。また、世界経済の回復という外的要因にも支えられていることも見逃せません。

◆パート大幅増
 企業の収益力強化につれて雇用環境も改善傾向にあります。しかし、それが必ずしも家計の改善に結びついているわけではありません。
 企業は、人件費を抑えるため、賃金コストの比較的安いパート(非正規雇用)を大きく増やす一方で、一般労働者(正規雇用)を減らしているからです。このため、企業が支払う現金給与総額は減少基調にあり、付加価値のうち家計の取り分である労働分配率も低下を続けています【グラフ1】。
 ただ最近、正規雇用の減少幅が縮小するなど、明るい動きも出てきました。今月1日に公表された3月の日銀短観も、雇用過剰感がほぼ解消し、企業に雇用拡大意欲が戻りつつあることを示しています。
 人件費抑制姿勢は今後も継続しそうですが、踊り場にある景気が回復に向かうためにも、個人消費の動向は重要であり、雇用環境、所得環境の足並みを揃えた改善が今後のポイントといえます。

◆高失業率続く
 03年初めから改善基調に転じた失業率ですが、若年層に関しては依然として、厳しい現状が続いています。04年には全体の失業率が4.7%だったのに対し、15〜24歳の失業率は9.5%と高水準にとどまっています。
 若者の高失業率の一因として、過剰雇用を解消する過程で、中高年者の雇用を維持するため新卒者などの採用を絞ったことが指摘されています。55〜64歳の失業率が、全体の失業率とほぼ同様に推移したのに対し、15〜24歳の失業率はかなり上方にぶれていることが分かります【グラフ2】。
 景気回復を受けて新規採用が増えるなど、若者の雇用環境も改善しています。しかし、若年層の採用に対する企業側のこれまでの消極姿勢が、若い社員の過重労働などの問題を引き起こしています。同年代の社員が少ないことから、1人が負担する仕事量が多く、大幅な時間外勤務を強いられているのです。
 また、正規の職業訓練を受ける機会がないまま、「中高年フリーター」になる者も増加しており、今後、大きな問題に発展することが心配されます。

◆過去最大の格差
 企業部門の中では大企業と中小企業の収益力の格差が大きく広がっています。
 景気回復の過程で、資本金10億円以上の大企業が経常利益を順調に伸ばしている一方、資本金1000万円〜1億円の中小企業の回復は出遅れています。金融を除く全産業の03年度における売上高経常利益率は、大企業の4.1%に対し中小企業は1.7%で、その格差は過去最大規模。04年度も通年でみれば同様の傾向が続いています【グラフ3】。
 収益力格差が拡大している原因は、大企業では削減の進んだ人件費などの固定費の比率が依然として高いことや、原料や素材などの仕入れ価格の上昇があります。大企業に比べて競争力の劣る中小企業にとっては価格転嫁が難しく、日銀短観でも先行き、仕入価格は上昇するが販売価格は下落する、という判断がより鮮明に表れています。
 固定費削減や利益率の向上を通じて経営体力の強化をどこまで図れるかが、中小企業にとっての大きな課題です。

公明新聞記事(H17. 4. 25)より転載