経済教室NO.7踊り場続く日本の景気

Q 景気の現状について、企業の見方はかなり厳しいようだが。

A 日本銀行が今月1日に発表した3月の企業短期経済観測調査(短観)では、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が、主要指標となっている大企業の製造業で前回(昨年12月)に比べて8ポイント下落のプラス14となり、2四半期続けての悪化となりました。
 DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から、「悪い」と答えた企業の割合を差し引いたもので、大企業製造業のDIは、前回調査で7四半期ぶりに悪化に転じるまでは、バブル経済期以来の高水準を記録していました。3月のDIについて民間の調査機関などは小幅ながら改善すると予測していたところが多く、実際に発表された8ポイント下落という数字は、大方の予想とは異なり、企業の景況感が予想以上に厳しく、景気の停滞状況が根強く続いていることを示しています。
 一方、内閣府が3月14日に発表した2004年10―12月期の国内総生産(GDP)成長率の改定値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.1%増(年率換算で0.5%増)と、3四半期ぶりにプラス成長を記録しました。
 しかし、伸び率は小さく、しかも、GDPの値を押し上げた主要な要因が企業の在庫投資の増加であり、必ずしも景気の回復傾向を示す要素ではありません。GDPの成長率から見ても、日本経済は、停滞から脱したとはいえない状況です。
Q 景気の停滞を長引かせている原因はどこにあるのか。

A 最大のポイントは、IT(情報技術)関連分野で在庫・生産調整が続いていることです。IT関連は、薄型テレビやDVDなどデジタル家電の需要拡大に支えられて景気回復の牽引役を果たしてきましたが、需要の低下によって昨年秋ごろから調整段階に入り、企業の収益も落ち込んでいます。これを反映して3月の短観では「電気機械」のDIが前回比14ポイント下落のマイナス3と大きく悪化しました。
 IT関連分野の在庫水準そのものは昨年末から低下しているため、既に調整段階は終わり、早い時期に景況が改善するとの観測も広まっていましたが、厳しい国際競争の中で販売価格の下落が続いていることが悪影響し、一般機械や精密機械などIT周辺分野の景況感も悪化させる状況となっています。また、このところの原油や鉄鋼価格などの原材料高で自動車をはじめとする非IT分野の企業収益も落ち込み、景気の不透明感を強めることになりました。米国や中国の好景気に支えられてきた輸出の伸びが鈍ってきたこともマイナス要因となっています。

Q では、日本の景気はこのまま後退していくのか。

A 景気が拡大から後退局面に入ったとの見方は決して多くありません。日銀短観でも、今後3カ月の「先行き」の判断は全体としてほぼ横ばいとなっており、企業も悲観的な予測はしていません。むしろ設備投資計画を見ると、大企業の製造業では04年度に22.7%と大幅増であったにもかかわらず、05年度もさらに3.4%増を計画、大企業全体でも1.0%増で、企業の積極的な投資姿勢が見られます。
 また、雇用については「過剰」と答えた企業の割合から「不足」と答えた企業の割合を差し引いた雇用人員判断が全規模、全産業を通じた全体でマイナス1と1992年11月以降12年ぶりに「不足」の方が上回りました。特に中堅、中小企業では人手不足を訴える企業が増加しており、雇用情勢に明るさが広がっています。
 企業に収益自体も一時に比べ減少したとはいえ、全体として依然、高い水準にあります。こうした状況を踏まえ、景気は後退へと向うのではなく、あくまで回復の途中の「踊り場」状態が続いており、再び回復へと動き出すとの観測が支配的です。
Q 景気の「再加速」に向けた課題は。


A 不安要素としては、原油価格の高騰や米国、中国を中心とした世界経済の後退などが考えられます。
 また、今回の日本の景気回復が従来と異なる点として、企業所得が大幅に増えているにもかかわらず雇用者所得が伸び悩んでいることが挙げられます。これには、正社員より賃金水準が低いパートや契約社員が増加しているという労働形態の要因もありますが、企業が利益の増加分を労働者には回さずに、会社の経営改善に多く振り向けているという所得分配の在り方が強く影響しています。
 企業としては、激化する国際競争を勝ち抜くために、少しでも体力を高めたいと考えるのは自然だといえます。しかし、個人消費の拡大は景気の回復に欠かせぬ極めて大きな役割を果たすことから、今後、労働者の賃金水準がどの程度向上するかも、景気の動向を計る上で大きなポイントとなっています。
              
公明新聞記事(H17. 4. 25)より転載