経済教室NO.6本格的なM&A(企業の合併・買収)時代に

Q M&Aが急増しているそうだが。

A 内閣府経済社会総合研究所の「M&A研究会」が昨年9月に発表した報告書は最近の動向について、「わがが国企業のM&Aは、国内で初めての本格的展開期にある」と述べています。
 かつて1980年代後半から90年代初頭にかけて、M&Aが増えた時期がありました。しかし、これはバブル経済を背景に、わが国企業による海外での企業買収が活発に行なわれたためです。一方、最近のM&Aの急増は、これとは様相を異にしています。国内での企業買収が非常に活発になっており、海外からの買収も増えているからです。M&Aの総取引件数は、90年代後半から急増を始め、昨年には2200件を超えました【グラフ】。
 
Q 国内企業に対するM&Aが増えている要因は何か。

A バブル崩壊後、日本経済が低迷を続ける中、わが国企業は生き残りをかけて「選択と集中」を掲げ、再編・再生を進めてきました。リストラ目的の”守りのM&A”です。そこでは、不採算部門の売却や統合などが行なわれてきました。
 最近では、グローバル競争に勝つための経営基盤強化や、新しい成長分野への進出などを狙った戦略的な”攻めのM&A”が増えています。
 一方、持ち株会社設立を認めた独占禁止法改正や、会社分割制度を創設した商法改正など、一連の法制度改革がこれを後押ししました。

Q 経済構造の大きな変化も背景にあるようだが。

A 大変に重要な視点です。90年代後半から、日本経済は大きな質的変化を遂げました。規制型経済から市場型経済への転換です。株式の持ち合い構造が崩れたほか、企業のガバナンス(統治)構造も、メーンバンクから市場による規律づけへと変わりました。
 こうした変化は、わが国企業だけでなく、外国企業にもM&Aへの参入を容易にするものです。従って、今後もM&Aが活発化していくことが予想されます。

Q M&Aによるメリットは?


A 経済が低迷する一因に、資金や人、技術・ノウハウなどの経営資源が十分に生かされていないことあります。M&Aにより、こうした資源が適正に配分され、生産性や収益性を向上させることができます。
 また、既存の経営資源を組み合わせることによるシナジー(相乗)効果も期待されるため、企業価値向上や経済の活性化につながります。

Q 一方で、敵対的TOB(経営陣の意向に反した株式の公開買付け)への企業経営者の懸念が高まっているが。

A 米国系ファンドSPJによるユシロ化学などに対する敵対的TOBや、三井住友フィナンシャルグループによるUFJホールディングスへの敵対的TOB表明により、昨年からわが国でも本格的な敵対的TOB時代に入った、とする論調が見られます。
 ライブドアによるニッポン放送株取得が、この問題への関心を一気に広げることになりました。M&A活発化に併せて今後、敵対的TOBも増加が予想されますが、問題点は、買収企業を解体して利益を上げる「乗っ取り屋」が横行すること。こうした企業価値をき損する買収に対して、防衛策【図】を講じておくことが重要です。70―80年代にかけて企業買収が激化した米国では、さまざまな対抗策が生まれました。

Q 米国などに比べ、日本での対抗策整備は遅れている感じだが。

A 18日に閣議決定された新しい会社法案に、企業防衛策が盛り込まれたほか、経済産業省の「企業価値研究会」は今年5月ごろに「平時導入・有事発動型」の新たな企業防衛策を提言する予定です。一方、証券取引所の時間外取引の規制も検討が進んでいます。
 ただ、敵対的TOBの防衛策といっても、経営者の保身ではなく、株主の利益を守るものでなければならないことは、言うまでもありません。

              
公明新聞記事(H17. 3. 21)より転載