経済教室NO.5金融行政の新たな指針「改革プログラム」

Q 新年度から「金融改革プログラム」が始動するというが、どういうことか。

A 2007年3月までの2年間の新たな金融行政の指針となるものです。政府の「構造改革と経済財政運営に関する基本方針2004」(骨太の方針第4弾)に基づき、金融庁が昨年12月末にまとめました。
 「金融サービス立国への挑戦」を副題に掲げ、@活力ある金融システムの創造A地域経済への貢献B信頼される金融行政の確立―の3本柱について、政府や業界が取り組むべき基本的な方向性を示しています。

Q これまでの金融行政の指針は。

A 02年10月に策定された「金融再生プログラム」です。この中で、大手銀行の貸出債権に占める不良債権の比率を今月末までに半分に減らす数値目標を掲げ、達成に向けて取り組んできました。
 1990年のバブル崩壊以降の金融行政は、不良債権という「負の遺産」の清算が優先課題となり、銀行への公的資金投入などを通じて金融システムを健全化させることが最大の役割となってきたからです。
 再生プログラムに沿って、産業と金融を一体的に再生させる施策や中小企業に対する公的金融支援策を拡充する中で、当時8%台だった不良債権比率は昨年9月末時点で4%台に低下。不良債権問題はほぼ解決のメドが立ち、金融再生の出口が見え始めています。

Q 今回の改正プログラムのポイントは何か。

A 金融行政の軸足を、不良債権問題を打開する「緊急対応型」から、金融機関の競争力や利用者の満足度を高める「活力重視型」に移すことを打ち出しています。
 金融には、「経済の血液」と言われる本来の機能を高め、新商品の開発や良質なサービスの提供といった前向きの姿勢を強めていくことが求められているからです。


Q 具体的には。

A 大手銀行の不良債権比率については、今月末時点の水準以下に維持するよう促しています。その上で、国民が質の高い多様な金融商品やサービスを手軽に利用できる「金融サービス立国」の実現に向けて、利用者ニーズ(要望)の重視と保護ルールの徹底を柱に据えています。
 日本の個人金融資産は04年9月末時点で約1411兆円に上り、そのうち現金・預金が55%を占めています。株式・出資金や投資信託、国債などの債権を合わせても13%程度で、資産が著しく現金・預金に偏っているのが現状です。
 市場中心主義の米国では、現金・預金の占める割合が13%程度と低く、株式・出資金、投資信託、債権の合計が55%近くに上り、日本とは対照的です【ゲラフ参照】。
 改革プログラムでは、国内外の投資家を呼び込む魅力ある金融市場を創設し、資産運用手段を多様化していくことで、「『貯蓄から投資へ』の流れが加速される」ことを目指しています。

Q 現在の日本における資金の流れは。

A 個人の預金を銀行が集めて企業に融資する「間接金融」が中心となっているため、景気が悪くなると銀行が貸し渋って中小企業が破たんする悪循環を生んできました。
 個人の資金を銀行を介さず、証券市場のような「直接金融」に比重を移行させていけば、中小・ベンチャー企業の資金調達がスムーズになり、経済の活性化を促進することができます。

Q 安心して投資できる環境を整える必要があるね。

A 確かに、最近では外国為替証拠金取引など新手の投資商品が登場し、詐欺的な行為による被害が拡大しています。特に、電話や訪問による勧誘を受けた高齢者などが実態を知らずに商品を購入して、多額の損失を被るケースが後を絶たない状況です。
 このため、改革プログラムでは、利用者保護を徹底するための具体策として、預金と保険以外の投資商品全般に規制をかける「投資サービス法(仮称)」の制定を盛り込みました。
 問題が発生するたびに既存の法律を改正して対応するやり方ではなく、英国の「金融サービス市場」のように、統一的な取引ルールなどを定めようというものです。商品販売方法の規制や悪質業者を排除する厳格な仕組みづくりが急がれています。
 また、偽造キャッシュカードなどの犯罪防止対策の強化も盛り込まれています。日本では偽造カードによる被害が出た場合、大半は預金者の損失となりますが、欧米では預金者負担の限度額を設定している自主ルールなどがあります。

Q ほかには。

A 金融サービスの利便性を高めるため、金融機関のIT(情報技術)戦略の活用を促し、電子的な資金決済や支払いなどに関する法整備の検討も明記。また、決済専門銀行など多様な経営形態の銀行参入や、金融機関の店舗施設の有効活用なども促進するとしています。
 4月からは、保護される預金が1000万円とその利息に限定されるペイオフが全面解禁されます。利用者の側にも、金融機関を選別し、商品を見極めて運用する心構えが求められています。

              
公明新聞記事(H17. 3. 7)より転載