経済教室NO.12005年の世界経済展望

Q まず、今年の世界経済の全般的な展望は?

A 世界経済は2001年のITバブルを底にして回復過程にあり、特に03年後半から昨年にかけては、米国や中国経済の好調さに引っ張られる形で、高い成長率を実現したと見られています。
 今年は、前半を中心に米国などが調整局面に入るため、成長速度は減速しそうですが、景気そのものは底堅く、引き続き成長を維持するというのが大方の見方です。民間機関による経済見通しをまとめたデータでも、こうした数値が表れています【グラフ】。また、多くの民間機関が年後半からの持ち直しを予想しています。

Q 日本経済にとっては、最も影響の大きな米国経済の動向が気がかりだが。

A 日本の輸出は、米国のGDP(国内総生産)と強い相関関係がありますからね。
 米国経済の行方を占う上で、まず重要なのは消費です。旺盛な消費を支えてきた大型減税の効果は、すでに失われています。それでも、年間売上額の4分の1を占めるクリスマス商戦で、昨年は低調とはいえ消費の腰折れを懸念する程ではなかったのは、これまで米国経済の課題とされてきた雇用環境が昨年秋以降、改善しているからです。
 今後については、需要減による在庫調整の動きに加えて、昨年からの原油高や利上げなどの影響で、前半は成長率の鈍化が予想されています。その後、在庫調整は比較的短期間で終わると見られ、後半には景気は自律的に回復するとの予測です。ただ、景気の力強いけん引役が見当たらないことから、力強さには欠けそうです。

Q 米国経済に死角はないのか。

A 決してそういうわけではありません。
最大の課題は、財政赤字と貿易赤字の「双子の赤字」です。すでにこれを背景にドル安が進行しており、株安、債券安(金利は上昇)の「トリプル安」につながれば、消費が大きく落ち込む懸念があります。そうならないように、米国政府は、早急な財政赤字に削減に取り組む必要があります。

Q 欧州ではユーロ圏の低迷脱出が課題だが。

A ドイツやフランスなどのユーロ圏は、外需と住宅市場の活性化によって穏やかな回復を遂げてきましたが、厳しい雇用環境から消費が伸びず、世界経済が減速を始めた昨年後半から成長率が鈍化しています。
 今年は、ユーロ高による輸出減や原油高の影響で、前半は低迷が続くと予測されていますが、後半には米国経済の回復基調に合わせて、幾分は持ち直す可能性があると予測されています。
 ただ、ユーロ圏の場合、金融緩和や財政出動の余地が限られており、低成長から抜け出るのは難しそうです。
 一方、英国では良好な雇用環境を背景に、安定成長が継続する見込みで、中東欧諸国も個人消費中心の経済成長から、輸出や設備投資にも広がるなど堅調さが持続するという予測です。

Q アジア経済では、中国景気の過熱気味が気になるところだが。

A アジア経済は、04年には内需・外需ともに好調で、高い成長を遂げてきました。
 注目は、ひときわ高い成長を続ける中国。鉄鋼、セメント、アルミの3業種を中心に投資の過熱懸念が高まり昨春、政府が抑制政策を強化し、昨秋には中央銀行が9年ぶりに金利引き上げを実施しました。
 このため、今年前半は、経済のけん引役である投資が減速に向い、経済成長も鈍化する見通しです。後半からは設備投資は拡大に転じるため、大きな落ち込みはない見込みです。
 ただ中国の場合、中長期的に成長を維持するためには、非効率な経済構造の改革や格差の是正も同時に進めていくことが課題となっています。
 韓国などのNIES、タイなどのアセアン諸国は、世界の景気が減速するなかで、前半は成長が鈍化しますが、後半にはシリコンサイクルの上昇などによって、回復に向かうと予想されています。

Q 原油価格相場の行方も、世界の景気を左右すると思うが。

A 昨年は原油価格が高騰し、世界経済に大きな波乱を与えました。
 米国ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)の先物相場で、代表的な指標商品であるWTIは昨年10月に55j台の史上最高値をつけた後、幾分値下がりしています【グラフ】。しかし、価格高騰の要因となった政情不安などの地政学リスクや、増産余力の不足、中国の需要拡大といった構造的な問題は、解消されておらず、楽観はできません。
 1バレル30jを基準に、原油価格10jの上昇で0.4%、20jの上昇で0.8%、世界のGDPは押し下げられるという試算もあります。原油価格が再び上昇するようであれば、世界経済の成長率は予想以上に鈍化する懸念も否定できません。
              
公明新聞記事(H17. 1. 10)より転載