経済教室NO.4加速するFTA(自由貿易協定)

日本はメキシコと締結で合意(2カ国目)
Q 最近、FTAという言葉をよく目にするが、どういうことか。

A 英語のFreeTradeAgreementの略語で、自由貿易協定と訳されています。特定の国や国境を越えた地域の間で貿易を活発にするため、関税や輸入制限を原則として撤廃する取り決めのことです。
 国家間の貿易で輸入品にかけられる税金を関税と呼びます。国が輸入品に関税をかけるのは、安い外国製品がどんどん入ってくるのを防ぎ、国内産業を保護するためです。その一方で、関税が引き下げられることにより、輸入品が安く買えたり、質の良いサービス関連のビジネスが入ってくるなどのメリット(利点)があります。
 最近では、単に関税の問題だけでなく、サービス貿易の自由化や投資ルールの確立、知的財産権や紛争解決手続きの取り決め、人材交流など幅広い分野を協定に盛り込む動きがあり、経済活性化を促進しています。

Q FTAをめぐる世界の状況は。

A 1958年に設立された欧州経済共同体(EEC)や60年に結成された欧州自由貿易連合(EFTA)が先駆けで、90年代以降、冷戦崩壊を契機として急増しています。世界貿易機関(WTO)に報道されているFTAの件数は、2003年10月13日現在で計155件です【グラフ参照】。
 15カ国が加盟する欧州連合(EU)や3カ国による北米自由貿易協定(NAFTA)が有名ですが、2国間の協定も多くあります。来年には、南北アメリカ大陸を中心に世界最大の34カ国で構成する米州自由貿易地域(FTAA)が実現する運びになっています。
 東南アジア諸国連合(ASEAN)では、アセアン自由貿易地域(AFTA)構想の実現に向けて本格的に動き出しています。中国はASEANとの間で10年までにFTAを完成させることで合意しています。

関税撤廃で競争力強化 ・
 政府、アジア諸国との交渉本格化へ ・ 経済活性化、人的交流など促進
Q 今、なぜFTAなのか。

A 世界的にFTAが拡大している理由は、WTOにおける多国間貿易協定よりも締結が容易であることが挙げられます。多国間交渉では、各国の利害が複雑に絡むため、全加盟国による貿易自由化交渉をまとめるには相当長い年月がかかります。その点、関係の密接な国や地域によるFTA交渉では利害の一致が得やすいわけです。
 FTA推進の意義について、公明党プロジェクトチームの遠藤乙彦座長(衆院議員)は、@長引くデフレ(物価の持続的下落)からの脱却A農業をはじめとする構造改革B冷戦崩壊後の外交・安全保障政策の確立―を促す足掛かりになるとの視点を示しています。

Q 日本の場合はどうか。

A 政府もWTOと両立させる形でFTAを推進する方向に踏み出しつつあります。02年にはじめてシンガポールと締結したのに次いで、今月12日にはメキシコと締結で正式に合意しました。政府は来年1月の発効を目指しています。
 メキシコは94年以降、NAFTAやEUとFTAを締結したことで、同国の輸出入は北米や欧州へと移行し、日本の比重は著しく低下。メキシコの輸入に占める日本のシェア(市場占有率)は、94年の6.1%から00年には3.7%に落ち込んでいます。メキシコとFTAを結んでいないことで、日本が被る損失は年間約4000億円に達するとの経済産業省の試算も出され、政府は早期締結が迫られていました。
 しかし、メキシコとの間では、農産物を含んだ初の包括的な協定となったため、02年11月から始まった政府間交渉は、昨年10月に一時決裂するなど難航し、1年4カ月を経てようやくまとまりました。
 今回のFTA締結により、日本側は豚肉やオレンジ果汁などの農産品で、メキシコ側は鉄鋼、自動車などの鉱工業製品でそれぞれの関税の垣根を低め、輸入拡大に努めることになります。

農業、労働など国内の構造改革が急務
Q 今後の展開は。

A 政府は今後、韓国やタイ、フィリピン、マレーシアとのFTA交渉を本格化させる方針です。ちなみに、韓国とのFTAが実現すれば、人口1億7000万人、GDP(国内総生産)約5兆jの巨大市場が形成されることになります。
 また、経産省によると、日本とASEANが締結した場合には、日本のGDPを1.1―2兆円押し上げ、15―26万人の雇用創出効果が見込める試算をしています。
 ただ、東アジア諸国との交渉では、メキシコよりも多くの課題に直面しています。農林水産物の交渉対象が広がるだけでなく、看護師や介護士の受け入れなど労働市場の開放もメキシコとの交渉ではなかった点です。
 公明党は「特に成長著しいアジア諸国とのFTAは、わが国の経済発展にとって極めて重要であり、全力で推進すべき」(神崎武法代表)とした上で、農林漁業の活性化に向けた対策づくりに全力を挙げています。東アジア諸国との交渉の加速化に向けては、国内の構造改革とともに基本戦略の明確化が急務となっています。特に、国内農業の足腰を強化する政策の具体化が求めれれています。
              
公明新聞記事(H16. 3. 29)より転載