経済教室NO.3進む歳出改革・来年度予算案に見る効率化の視点

予算執行調査
事業の有効性などを事後点検
  財務省が前年度に査定した予算が適切に使われているかどうかを事後点検し、翌年度の査定に生かす「予算執行調査」が軌道に乗り始めた。民間企業が行っている事後評価手法を適用したもので、ムダ遣いを洗い出し、予算執行の効率化を図ることが目的。02年度からスタートし、03年度はさらに拡充された。
 財務省主計局の予算査定の担当者が事業の現場に出向き、@事業の効果が実現しているかA事業の進ちょく状況はどうかB事業のコストが効果に見合っているか―といった観点から運用状況を点検する。
 02年度は43事業について調査し、政府米の保管単価を引き下げたり、自衛隊車両の整備工場の稼働率を向上させるなどの改善を行い、03年度予算編成で総額189億円を削減した。
 03年度については一般会計に加え、18の特別会計の20事業を含む51事業を対象とした。その結果、デフレによる物品や工事の単価下落がきちっと入札価格に反映されていない例などが見つかり、04年度予算案で改善を図った結果、計492億円の節約が実現した。
 例えば、防衛庁の基地周辺対策事業では、基地周辺住宅向けの防音サッシなどの単価を市場実勢を反映して引き下げ、約30億円を減らすことができた。また、経済産業省の住宅用太陽光発電システム導入促進事業では、02年度の補助率が13.8%まで低下していることを踏まえ、来年度は予算を半減して52億円浮かせるとともに、05年度には廃止する事を決めた。
 財務省は04年度予算案での削減効果を踏まえ、05年度予算の編成に向けては、特別会計の事業を軸に重点調査を行う方針だ。また、「モデル事業」となった10事業についても調査対象とし、数値目標などの達成度を検証して、翌年度の予算編成に反映させる方針だ。
特別会計の見直し
初の本格的取り組みで5000億円以上節減
 04年度予算案では、不透明でムダが多いと指摘されている特別会計の見直しに初めて本格的に取り組んだ。事業内容や制度を大幅に再検討し、事務費の削減にも力を入れた結果、03年度予算より計5000億円以上の節減を行い、歳出改革のリード役となった。
 特別会計は国が特定に事業を手掛けたり、特定の資金を運用するため、一般会計とは別に財政法で設置が認められている。@道路整備、土地改良などの特定の公共事業を行う事業特別会計A国民年金、厚生年金などの社会保険事業などを行うための保険特別会計B食糧、国立病院、外国為替など財貨・サービスの管理、市場調整を行うための管理特別会計―などに分類される。
 現状は、廃止が決まっている国立学校特別会計を除いて計31会計がある。04年度予算案では、歳出総額は単純合計で約387兆円、会計間の重複を除いても約200兆円と、一般会計の約82兆円を大きく上回る。
 特別会計は各省庁が個別に管理し、各会計ごとにタテ割りで扱われるため、全体像が見えにくく、非効率な事業が温存されているとの批判が多い。実際、年金保険料で建設された福祉施設の大半が赤字経営に陥り、委託している公益法人に官僚が大量に天下りしている実態などが浮き彫りになっている。
 公明党はマニフェストで一般会計のムダ使いを防ぐとともに、「構造が複雑で透明性の低い『特別会計』については、廃止を含め合理化を進める」とし、大胆な見直しを提起した。
 こうした取り組みを受けて、財務省の諮問機関である財政制度等審議会は昨年11月26日、50項目以上の見直しを提言。大別して@廃止を含む事務事業の見直しA不用歳入・歳出を通じた構造の見直しB説明責任の強化C特別会計として区分経理する必要性の総点検―を具体的に指摘し、04年度予算案に反映された。
 このうち厚生保険、国民年金の各特別会計では、福祉施設の整備に必要最低限の補修費しか認めず、62億円を節約。石油エネルギー需要構造高度化特別会計では、多額の不用が生じている備蓄関係経費の抑制などで、一般会計から特別会計に繰り入れている資金を445億円減らすなど、一般会計の歳出改革にも効果をもたらした。
公共工事単価下げ
コスト削減へ価格交渉方式など導入
 道路や港湾整備などの公共事業関係費は03年度比3.5%減の7兆8159億円で、公的な建物を整備するための施設費を合わせた公共投資関係費は同3.3%減の8兆6149億円。
 必要な事業を実施しながら公共投資関連の経費を削減するには、コスト(費用)の圧縮が不可欠。政府は03年度から5年間で15%の引き下げをめざしており、コスト削減策の強化に取り組んでいる。
 その具体策として、04年度からは大規模な公共工事について、大幅なコスト削減を行い、公共事業改革の先駆として注目された中部国際空港の事例を踏まえ、発注と積算を軸に新たな方式を導入する。
 来月2月の開港に向けて着々と整備が進む中部国際空港では、民間コンサルタントを使って独自の資材価格調査を行い、公共工事の予定価格に相当する制限価格を積算する。入札後は同価格を参考にして、最低の見積価格を提出した第1候補者と価格交渉を行い、徹底的にコストを切り詰める。交渉不成立なら別の候補者と差し替える。
 交渉ではVE(バリューエンジニアリング)という制度を採用。業者にコスト改善の提案を行わせ、削減できれば、節約分の一部を受注業者に支払う仕組みで、空港島造成の工法などに功を奏した。
 このように、工事の積算を厳しく査定し、入札や契約などで民間企業の手法を駆使してコストを減らす努力を積み重ねた結果、総事業費は6431億円と、当初計画の7680億円から約1250億円、約16%も縮減する効果を生んだ。
 政府はこの中部国際空港の節約ノウハウ(方法)に着目し、積算についてはインターネットを活用して大口取引価格を適切に反映するようにし、発注については競争入札後にVE提案を受け入れ、交渉過程を経て契約を行う「価格交渉方式」を採用する。
 公明党はマニフェストで、資材単価の見直し、入札制度の合理化などにより、03年度から4年間で公共事業コストを20%削減する事を掲げ、政府に一層の取り組みを促している。
政策群、モデル事業
省庁の垣根を越えて予算配分複数年度の事業も認める

 省庁の垣根を越えて重要政策に横断的予算配分を行う「政策群」と、複数年度にわたる事業を認め、弾力的なお金の使い方が出きる「モデル事業」という二つの予算改革が初めて導入された事も注目される。
 同様の制度は、「ニュー・パブリック・マネジメント」(NPM=新公共経営)と呼ばれ、英国やニュージーランドなどで採用され、財政改革に効果を上げているといわれている。
 政策群とは、少子化対策や雇用創出といった複数の省庁にまたがる政策課題について、重複予算を避けながら規制改革を同時に進め、民間活力も活用する試み。似たような事業を別々の省庁で実施する「タテ割り行政」のムダを省き、効率的な予算配分を行うのが目的だ。
 04年度は、次世代育成支援や若年失業者の就業促進、低公害車・燃料電池車の普及、都市と農村の交流など、延べ13府省庁がかかわる10事業に計1兆4000億円余が計上された。
 例えば、「『低公害車』社会の構築」では経済産業省など4省が連携し、各省間で低公害車導入に対する補助金が重複しないようにする一方、燃料電池自動車の実用化に向けて車両や水素スタンド、トンネルなどの規制緩和を進める。
 一方、国の予算は財政法によって毎年度の歳入と歳出を明確にし、国会で1年ごとにチェックする「単年度主義」が原則だ。ただ、使い残しは返上しなければならないため、年度末に不要な工事や物品を購入するといった「駆け込み消化」を招くなどの問題も指摘されている。
 こうした弊害を打破する新たな手法が「モデル事業」だ。具体的には、1〜3年の期間で達成目標を設定し、効果的な予算執行で余裕が生じた場合は翌年度に繰り越したり、使い道を変更できる。省庁に柔軟な予算の使用を認める代わりに、政策目標を明確にし、達成度を厳格に事後評価する試みだ。
 04年度は9省庁による10事業に約700億円が配分された。このうち9事業が2〜3年の「複数年度予算」となっている。ちなみに、外務省は海外に居住する日本人の有権者数(約66万人)のうち、選挙人登録をしている人が1割程度にとどまっているため、06年度までに2割まで引き上げることをめざす。
ムダ追放へ連絡会議
公明提案で内閣に設置行政効率化など柱に検討

 政府は現在、簡素で効率的な政府を築くため、公明党の提言を受けて、内閣に「行政効率化関係省庁連絡会議」を先月5日に設置し、行政のムダを省くための検討を進めている。
 公明党はマニフェストで、税金のムダ遣いを徹底的になくすため、政府内に「総理陣頭指揮の対策本部」を設置するよう提言。今年1月22日衆院本会議で神崎武法代表が改めて提案したのに対し、小泉純一郎首相が内閣に検討チームを設けることを表明した。
 同会議は公共工事のコスト削減や電子政府の構築による行政事務の効率化などを柱に取り組む。特に、01年度以降の各省庁の所管事業や事務を「ムダ」という観点から洗い出し、従来の対応を検証する作業にも乗り出している。連絡会議の成果のうち執行段階で実施できる内容は順次取り組み、本格的には05年度予算編成過程で反映させる方針で、具体的な検討の成果が期待される。
                                 
公明新聞記事(H16. 3. 18)より転載