経済教室NO.1設備投資、輸出主導の拡大続く

 
不安要因が消えて持ち直し
Q
2004年度の経済見通しの前に、まず日本経済の現状について説明してもらいたい。

A 日本経済は02年1月に底入れした後、景気回復を続けています。その間、02年末から03年初頭にかけては、イラク情勢の緊迫化や重症急性呼吸器症候群(SARS)などによる米国やアジアの景気悪化の影響を受けて、減速気味になりましたが、これらの不安要因が取り除かれたために、持ち直しています。政府によれば、03年度の国内総生産(GDP)は実質で2.0%と2年連続でプラス成長になる見通しです。

Q今回の景気回復の特徴は何か。

A まず、景気回復が輸出の伸びに伴って始まったことです。特に、IT(情報技術)関連の市場回復によりアジアや米国向けの輸出が好調に転じたことが大きな役割を果たしました。
 また、企業収益も大きく改善を見せています。リストラの効果が表れ、製造業を中心に、02年度には大幅な増収増益を実現した企業が相次ぎました。03年度も増益が見込まれています。さらに、景気に大きな影響を及ぼす設備投資が、パソコンや携帯電話、液晶などハイテク関連を中心に増加に転じたことが挙げられます。
 一方、個人消費は穏やかながら増加しており、底堅い動きを見せています。厳しい雇用・所得環境の劇的な好転は望めませんが、生産回復による所定外給与の増加など明るい面も出ています。冬のボーナス商戦では、薄型テレビやDVDレコーダー、デジタルカメラなどが好調だったように、久々の大型ヒット商品になると期待されます。

Q では、04年度も景気回復はこれまでの好調さを持続できるだろうか。

A 引き続き、景気拡大が続くという見方が有力です。政府の経済見通しは、04年度の実質GDP成長率を1.8%と示しています。また、シンクタンクも、2.8〜1.3%と幅はありますが、平均すれば同程度の成長率になるだろうと予想しています【表参照】。
 これまでの日本経済は輸出主導によって回復してきたので、世界経済の動向が最も気になるところですが、04年度には回復傾向がより鮮明になると見られています。特に、米国では大幅な減税により個人消費が拡大しており、これにけん引される形でアジアでも成長率が高まると予想されています。
 一方、低迷が続いてきたEU(欧州連合)諸国も、持ち直す気配を見せており、総じて日本経済を取り巻く環境は改善の方向にあります。



Q 引き続き輸出を軸にした拡大が維持されるということだね。では、国内の要因はどうか。

A 国内では、りそな銀行の国有化による金融システム不安の後退や不良債権処理の進展、株価の低迷脱出など、経済や金融をめぐるムードが明るくなっています。
 まず、企業部門では在庫水準が低い状態であり、生産の増加が続く見通しです。こうした生産増や企業収益の改善を背景にして、設備投資も03年度に引き続いて拡大し、景気をけん引するものとみられています。ただ、企業設備の過剰感は依然として解消されておらず、現実にもキャッシュフロー(手元資金)の範囲内で設備投資が行われていることから、大幅な設備投資増は考えにくい状況です。
 また家計部門では、企業のリストラが一服するなど雇用・所得環境の改善を背景に、個人消費が引き続いて底堅さを維持し、穏やかながら拡大を続ける見通しです。民間住宅投資については微減傾向ですが、ローン減税の延長や、長期金利の上昇傾向を受けた駆け込み需要が見込めるという見方もあります。

 
円高なら輸出にブレーキも
Q 景気回復の持続を阻害するような不安要因はないのか。

A 幾つか考えられます。まず、米国景気の減速です。現在は好調な米国ですが、04年度の後半には減税の効果がはがれ落ち、加えて投資も一巡するという見方があります。このシナリオによれば、それに伴い日本の輸出や生産活動が抑制され、景気回復力はスローダウンする見通しです。
 また、米国で財政・貿易の「双子の赤字」が問題になっており、為替相場は今後も円高で推移する可能性があります。これも輸出にブレーキをかけることになります。
 国内では、輸出の減少や在庫の増加に加え、企業のリストラ効果が一巡するため、設備投資の伸びが鈍化するという予測があります。
 これらの影響で、04年度後半には景気は調整局面に入るのではと見られています。

Q ところで、デフレはまだ続くのか。

A 景気回復により、需要ギャップが改善しており、物価下落幅も縮小傾向にあります。ただ、依然として需要ギャップは残っていますので、物価上昇率がプラスに転じるまでには至らないでしょう。
                                 
公明新聞記事(H16. 1. 5)より転載